日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おれさまはようかいやで』 あんずゆき

(月刊「こどもの本」2015年11月号より)
あんずゆきさん

ちっとも怖くない!?

 この絵本の主役は、言わずと知れたおれさま=妖怪ですが、このおれさまは、妖怪に分類があるとするなら、絶対に、どうしようもなく、おもろい系に所属しています。
「なんでやねん。おれさまは、こわーい、きしょくわるーい、ようかいやで」と、本人は文句を言っていますが、表紙を見たら一目瞭然。おれさまは、ちっとも怖くない。いえ、それどころか、かなりおとぼけの、善良なる妖怪です。
 そもそも、おれさまが突然現れたのは、二年前のことでした。夜、新幹線に乗ったすぐから、くったりと眠りこけていた私が、ぼうっと目をあけたとき、耳もとで、こんな声がしたのです。
「あやしいやつめ。ま、そういうおれも、あやしいんやけどな」
(私、あやしいやつちゃうで)と声なき声で言ったか言わなかったか……。もちろん、すがたは見えません。
 その時以来、彼?の強烈な個性と大阪弁は私の中に居座って、絵本が刊行された今でも、ボケツッコミで会話しているのです。もちろん、大阪弁で。
 それにしても、物語を書いている間じゅう、つぎからつぎへと言葉があふれて、大阪育ちの私が大阪弁で書くと、こんなにもノリツッコミが自然に出てくるのか! くそまじめな私が、こんなにおもしろく話を書けるなんて! と、かなり宣伝モードで恐縮ですが、つい、にまにましてしまうほど楽しく時をすごすことができました。
 子どもが大人になるまでの取り巻く環境、風土。身に染み付くとはこのことでしょうか。
 ところで、この物語、かわいらしい星の子が、おれさまの心をとらえ、そして別れがくるのですが、実は、この深いところは、恋する大人に通じるものがあると思っています。いかにも片思いですが。
 最後になりましたが、あおきひろえさんが描いてくれた、おれさまの世界は、大胆で楽しくて、おしゃれな色がとってもすてきです。是非とも絵本を開いて見てください。

(あんずゆき)●既刊に『おばけ、さがさないでください』、新刊『モンキードッグの挑戦』など。

『おれさまはようかいやで』 
文溪堂
『おれさまはようかいやで』 
あんずゆき・さく
あおきひろえ・え
本体1、500円