ことばは、たから
『ことばずかん』のこの仕事をいただいたとき、編集者が、あまり堅苦しくせず、侍と忍者などを登場させて、楽しい紙面作りをしましょう、といってくれました。ワオ! なんとアタマの柔らかい方なんでしょう。それは願ってもないこと。そういう世界は大好きだからです。
あのシーラカンスだって生きていたんですからね。侍や忍者だって、まだ世間のどこかにいてもちっとも不思議ではありません。それに、侍たちがふつうに現代の日常にかかわるって、とっても楽しい気がしてきます。おかげで、二人とも勝手に動き出して、とても面白い仕事になりました。自分で描きながら、ゲラゲラ笑ったりして。
家の近所に四、五人の小さな子どもたちがいるのですが、たまに会うと、「こんにちは」とか「行ってきます」とか、あいさつをしてくれます。秋晴れのような心地よさです。
成長していく子どもたちにとって、自分の「からだ」に関するさまざまなことば、「あいさつ」や「きもち」など、自分が周りとかかわっていくために必要なことばを覚えていくことは、とても大切なことです。
この本では、それらに関する名詞、慣用句、ことわざなどを、文字以外に、できるだけ読み取りができて楽しめるように、笑いの要素をふんだんに入れるようにしました。楽しみながら読んでほしい本です。
ハハハ、フフフ、ホッホッホ。苦しいときや悲しいときは笑えません。笑えるということは、とても幸せなことですね。表情が豊かになるし、お腹を刺激して食欲も増します。脳にもいいらしいのです。実際に笑わなくても、唇の両端を上げるだけで、脳は「楽しい」と錯覚するとか。
ちょっとむずかしいようなことばや表現でも、楽しいページから入っていき、笑いながら、ことばやその意味を覚えていく。この本を、そんなふうに子どもたちが使ってくれたら、とっても嬉しいなあ。
(なかざわ・まさと)●既刊に『げんきなからだのことばずかん』『ねこどんとねずみどん』(水谷章三/文)など。
世界文化社
『きもちをつたえる ことばずかん』
中沢正人・絵
本体800円