トイレへの招待状
新しく絵本を作ることになった。「トイレ」の本である。
ここで、「うーっ」と私は悩んでしまった。トイレトレーニングは、子育ての結構なハードルであるらしい。そして、当事者たちは、本当に真剣に悩んでいるのだ。「トイレで、ちゃんとおしっこできるのかしら」って。
これを読めば確実にトイレで、ちゃんとオシッコやウンチができる!といった、魔法のような、子育てハウツー本は、到底書けないだろう。教則本のような、トイレ絵本も既にたくさんある。ああ、どうしたら…悩みに悩んだあげく「意外とトイレって悪くないぜ!」という招待状のような絵本はどうだろう?という着地点を見つけた。
主人公のおばけのモジくんは、おばけなのにトイレがこわい。前に、洋式トイレの穴にはまって、落ちたのだ。おまけに夜のトイレは、カリカリ変な音もする。奇妙だ。恐怖だ。便器の中に落ちる。この悩みはおばけでなくても、ある。子どものお尻にあわせた小さな専用便座を置かないと、スッポリはまって落ちるのだそうだ。
ちょっとしたきっかけ、お気に入りのシールがトイレに貼ってあって行けるようになった子どもの話を聞いて「なるほどな」と膝をうった。ちょっとしたこと、そんな楽しい少しのきっかけが、トイレへの招待になるのではないか。
モジくんは、お兄さんの粋な計らいでトイレへ行けるようになった。明るいダンスとおかしな呪文、それからシール。おばけなので、もっともっと奇抜な解決方法もあったのだろうが、子どものおばけらしい、小さな楽しさのようなものを見つけたくて、私たち人間にもできそうなものになった。
親子でマネして、本物のトイレに行けるおまじないになればいいなと思っている。
さて、私の息子も今は紙おむつだが、半年もすれば、いよいよトイレトレーニングをしなくてはならない。ふう、困った。「イケチャウイケチャウ トイレット!」と彼も楽しくトイレに行ってくれるようになると、いいのだが。
(もかこ)●既刊に『ルンバさんのたまご』『うめぼしくんのおうち』。
ひかりのくに
『おばけのモジくんトイレいけるもん!』
モカ子・作・絵
本体1,100円