日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『みんなでつくっちゃった』 土井章史

(月刊「こどもの本」2015年3月号より)
土井章史さん

とてもうれしい仕事

 大日本図書の當田さんから「40年前、長新太さんの『みんなでつくっちゃった』という絵本があったんだけど、復刻作業てつだってくれないか」という提案。うれしかった。当時の本の奥付をみると大日本の創作シリーズで日本イラストレイター会議/大日本図書共同編集とある。つまり編集権は作家側にもある。ぶっちゃけて言えば、作家が好き勝手に作ってください、ということにもとれる。おそらく長さんはこの絵本シリーズの企画からかかわっていて、この絵本のなかの動物たちと同じように「つくっちゃった」、と推察する。ページを開く「もりにしんぶんが たくさん おちていました」。次のページは「すこしたつと しんぶんは なくなっていました」。そして次のページは楽しくて「いばってあるくねこのぼうしを みてちょうだい」となる。だから新聞紙は猫の帽子になっているのですね。そのあとは、ドレスになったり家になったりマフラーにもなっております。それが新聞紙のコラージュなのです。新聞紙というのは、家庭に毎日配られるもので、その日が過ぎて新しい新聞が配られると僕らはその新聞紙にあまり価値をみいださなくなって、ぐしゃぐしゃにして荷物の緩衝材にしたりしている。つまりどういう風につかってもかまわない、考えてみれば貴重な遊び道具としての紙であるのです。これは子どもたちにとって楽しい提案でもある。この絵本をみて森の動物たちのように子どもたちも新聞紙でいろいろ作るのはきっと楽しいはず。絵本の動物たちの表情は、さすが長さんと柏手をうちたいくらいに愛らしい。この復刻版は、元版がB5サイズだったのを、A4サイズに大きくしました。幸い原画も見つかり当時以上の再現性があり、予算の制限があったのか、一色刷りのページもカラー印刷にし新聞紙の質感が際立っています。冷静にみても当時の物よりいいのではないかと思っていますが、実は冷静ではいられなくって、とにかくこの編集作業に加われたよろこびが、できあがった﹃みんなでつくっちゃった﹄を開くたびに込み上げてくるのです。一冊の長新太の傑作が蘇りました。

(どい・あきふみ)●筆者がすすめる長新太さんの作品に『かえるのはなび』『人間物語』『キャベツくん』など。

「みんなでつくっちゃった」
大日本図書
『みんなでつくっちゃった』
長 新太・作
本体1,500円