日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おおきなかぼちゃ』 おびか ゆうこ

(月刊「こどもの本」2011年11月号より)
おびか ゆうこさん

楽しさいっぱいハロウィン絵本!

 最近は日本でも十月になると、あちこちで、カボチャの飾りつけが目につくようになりますね。カボチャといっても、外側が深緑色をした日本風の「かぼちゃ」ではありません。外も中も色あざやかな、だいだい色のハロウィンのカボチャ、パンプキンです。そして、お菓子屋さんやパン屋さんには、カボチャの形をしたクッキーやパンが並びます。もちろん、カボチャのパイも! カボチャ好きには、なんとも嬉しい季節のおとずれです。

『おおきなかぼちゃ』は、そんなハロウィンにぴったりの、とてもゆかいで楽しい絵本です。ハロウィンというのは、本来あちらの世界にいるものが、こちらの世界へやってくる、ちょっと恐いお祭り。ところが、ここに登場する魔女や幽霊たちは、恐いどころか、思わずくすりと笑いたくなるほどユーモラスで、あいきょうたっぷりです。

 吸血鬼やミイラまで出てきて、大きなカボチャを、それぞれ力いっぱい引っぱります。「ぐいっ! ぐぐぐいっ! うぐっ うぐっ ういー!」と。

 ところが、カボチャはびくともしません。そこで、最後に登場するのが、小さいけれど賢いコウモリ。その知恵と、みんなの力で、巨大なカボチャをようやく収穫できるのです。

 ここまで読んで、どこかで聞いたようなお話だなあ、と思っていらっしゃる方も多いのでは? まさに、ロシアの民話、『おおきなかぶ』のカボチャ版ですね。作者のエリカ・シルバーマンさんは、子どもの頃から、『おおきなかぶ』のお話が大好きだったそうです。ただ、協力のし方や結末はちがいますので、お楽しみに!

 この絵本には、ひとりでふんばるのではなく、仲間と協力してやりとげることの大切さ、ひとりじめするより、みんなで分け合うことの楽しさが、パイの中味のようにつまっています。

『おおきなかぼちゃ』で、ハロウィンがいっそう楽しい行事になりますように。そして、みんなで、おなかいっぱい、カボチャのパイを食べましょう!

(おびか・ゆうこ)●既訳書にC・ロード『ルール!』、G・シールズ『だいすきがいっぱい』など。

「おおきなかぼちゃ」
主婦の友社
「おおきなかぼちゃ」
エリカ・シルバーマン・作 S・D・シンドラー・絵
おびかゆうこ・訳
本体1,200円