魔法を信じるのは希望を信じること
夜空をほうきで飛んでいた魔女が人間の飛行機のパイロットと出会って一目惚れ。結婚して生まれた娘のカオリがママの魔法にふりまわされる物語も五十巻で遂にフィナーレを迎えました。
最初は一話完結のつもりだったので、最後にママが「魔法より人間のパパとの愛をとる」ことにしていました。それをシリーズにしたいと編集者から言われ、エンディングを変え、ママが魔法をつかったまま二十五年が過ぎました。五十巻も続いたのはそのアドバイスのおかげです。
書き始めたのは、アメリカに家族で住んでいたとき。だから、魔法の国と人間の国で揺れる思いは、アメリカと日本の間で揺れる私達家族の思いでもありました。日本語や日本の文化を忘れてほしくはないけれど、アメリカでもきちんとやってほしいという思いです。カオリが魔法の国に憧れながらも、ママの習慣が違うのを悩んでいるのは、異国で暮らす子供達と共通の思いです。
また子供達は、親や兄弟との関係等、家庭に関して一つや二つはみんな、秘密や悩みをもっています。ママが魔女である秘密は、友だちにも言えないそんな秘密と同じです。秘密や悩みを抱えながら元気に生きるカオリは子供達みんなの姿なのです。
けれども、それは努力したからといって、解決するものではありません。 そんなとき、魔法を信じてほしいのです。シンデレラや白雪姫と同じようにいつかすてきな魔法がおきるかもしれないということをです。
自分だけが孤独で辛いと思っている状況で、「魔法を信じること」は「いつかきっとすてきな奇跡が起きる」と希望を信じることなのです。
この度、完結巻を迎え、二十五年前に書いたエンディング通り、魔女のママは、魔法神殿で魔女を捨てて人間のママとして、カオリ達とパパを愛することになりました。
この本を読んだ子供達が人生には魔法みたいにステキなことがきっと起きると、どんなときも希望をもってくれることを願っています。
(ふじ・まちこ)●既刊に当シリーズのほか、「まじょ子」シリーズ(全53冊)、絵本『ねっこばあのおくりもの』など多数。
ポプラ社
わたしのママは魔女
『さようなら、まほうの国!!』
藤 真知子・作
ゆーちみえこ・絵
本体900円