日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『そして恐竜は鳥になった』 小林快次

(月刊「こどもの本」2013年7月号より)
小林快次さん

動物としての恐竜に迫る

 ティラノサウルスにトリケラトプス、アロサウルスにステゴサウルス。恐竜に興味が無い人でも聞いたことがある名前だろう。強い恐竜、変わった恐竜、大きな恐竜。私が子どものときから有名な恐竜たちである。

 ジャック・ホーナー、ケン・カーペンター、フィリップ・カリー。30年くらい前から恐竜研究者として有名で、現代恐竜研究の基礎というものを作り上げていった人たちだ。そして、この10年間、恐竜研究も恐竜研究者も多様化を遂げている。

 恐竜研究の成果によって、恐竜というものがよくわからない不思議な〝怪獣〟的存在から、私たちの〝ペット〟という身近なところまで距離感を縮めている。

 私が子どもの頃の恐竜大好き少年たちは、どの恐竜が一番強いかなんていう疑問をもっていた。ティラノサウルスなのかアロサウルスなのか。しかし、今の子どもたちは、そんな質問では物足りない。むしろ、そんな質問に意味が無いことをよく理解している。それぞれの時代には、異なった生物が棲んでおり、それぞれが違った体の構造を進化させ、異なった方法で獲物をとらえていた。今の子どもたちは、単に強いか弱いかということではなく、生物としての像について興味を持っている。走る速さ、噛む力、嗅覚、成長や子育てといった多彩な面から見た動物としてのティラノサウルスとアロサウルスに興味がある。研究者の多様化と共に、恐竜に興味のある子どもたちも進化している。

 このように、恐竜を〝怪獣〟ではなく、動物として見ることによって、これまでの恐竜の謎が明らかになってきた。恐竜は絶滅をしておらず、鳥に形を変えて現在でも私たちと共に生きているということも。

 窓の外を見ると、庭の木にとまっている恐竜たち。食卓にあがる恐竜の肉や卵。これらの恐竜がどのようにして進化し、私たちのもとに存在しているのか。恐竜の進化、そして恐竜の鳥化。最新研究の視点から、恐竜をわかりやすく詳しく紹介しているのがこの本である。ぜひ一読してほしい。

(こばやし・よしつぐ)●既刊に『超最新恐竜学』『恐竜時代Ⅰ 起源から巨大化へ』など多数。

「そして恐竜は鳥になった─最新研究で迫る進化の謎─」
誠文堂新光社
『そして恐竜は鳥になった─最新研究で迫る進化の謎─』
本体1,500円