日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『アブナイかえりみち』 山本孝

(月刊「こどもの本」2013年5月号より)
山本孝さん

おバカな男子の妄想絵本です!!

 僕たちが子どもの頃に夢中になった、あるテレビ番組があった。「水曜スペシャル 川口浩探検隊シリーズ」である。

 川口浩隊長率いる探検隊が、ジャングル、洞窟などあらゆる危険な場所に分け入り、人食いワニ、猛毒ヘビなどを相手に、様々な幻の生物、伝説の都市などをもとめて探検する番組である。

 当時何の変化もない田舎で、ただ「ボー」と暮らしていた僕らにとって、この探検隊が繰り広げる、刺激的な世界はとても新鮮で、魅力的なものに感じられた。放送日には必ずと言っていいほど、人食い虎や、謎の原人が夢に現れてうなされたものだ。

 番組を見た次の日、学校での男子たちの話題はもちろん探検隊一色で、それは、否応無しに僕たちの遊びにまで影響を及ぼした。「探検隊ごっこ」ブームの到来である。クラスの男子たちは、放課後になるとそれぞれが思い思いの探検隊となって、各下校路に旅立っていった。校門を出たその瞬間、いつもの見慣れた風景が、頭の中でアブナイ世界へと変わっていく…。いつものあぜ道が崖道に、空き地がジャングルに、よじ上るブロック塀が空をも突き抜ける高い壁に、その下を流れる小川は人食い魚がうごめく急流に…。無限に広がる妄想世界で、男子たちは日が暮れるまで探検をした。

 この愛すべきアホ男子たちの妄想世界をなんとか絵本にできないものか…。四十歳を過ぎて、未だに妄想癖のある絵本作家と編集者が、同じ思いで動いた。二人で妄想すること一年…。ついに男子型妄想絵本『アブナイかえりみち』が完成した!

 放課後の教室で何やらヒソヒソと話し合う男子が五人…。

「ここは われわれ ほうかごスペシャルたんけんたいの ほんぶである」

 何やらアブナイムードが漂う。

「こんかい われわれは まぼろしの おうきゅう チンダ・ダラハの てっぺんを めざす」

 彼らの目指すチンダ・ダラハとは!?

 そして彼らを待ち受ける苦難とは!?

 おバカな男子のアブナイ妄想世界、どうぞ心ゆくまで楽しんで欲しい!!

(やまもと・たかし)●既刊に『ちゃんがら町』、内田麟太郎/文『十二支のおはなし』、齋藤孝/編『祇園精舎』など。

「たいこうち たろう」
ほるぷ出版
『アブナイかえりみち』
山本 孝・作
本体1,300円