おやつと遊べば…
扉、窓、箱、本など閉ざされているものを開ける時は、いつも心地よい緊張感を覚えます。閉ざされた向こうの見えない世界には何が待っているのだろう…と胸が高鳴ります。
幼い頃、我が家の茶箪笥の上段にはメリーゴーランドの模様のついた丸い缶が置いてあり、その中に母はいろいろなお菓子を入れていました。おやつの時間になると、そこからビスケットやおせんべいを出してくれるのですが、缶の蓋を開けるまでは中でお菓子たちがわいわい遊んでいるような気配が私にはいつも感じられ、開けた途端にそれが急に静まるような気がしていました。それはちょうど「だるまさんがころんだ」の鬼のような感覚で、振り返った途端、みんなが笑いをこらえながら、思い思いの変てこりんな格好でじっとしている…あれによく似ていました。色とりどりの動物ビスケットなどは特に、絶対缶の中で遊んでいたな!と確信したものです。
それ以来、大人になった今でも、物は何でも、人が見ていない所でいろいろなことをして遊んでいる…という勝手な思い込みというか変な癖がずっと続いています。
今回、多分いつも遊んでいるに違いない物の中から、特に大好きなおやつを選んで、私もその遊びに入れてもらおうと思いました。私が見ると彼らはすぐに遊びをやめてしまうので、見ないふりをしつつも心の眼でよーく見ながら、言葉で仲間入りすることにしました。つまり言葉遊びで入れてもらったのです。そして、tupera tuperaさんには色と形で入って頂き、こんな絵本が誕生しました。
おやつたちは内緒で遊んでいたはずなのに、こんな風に目に見える形にされてしまい、びっくり仰天していることでしょう。でも彼らだって、この絵本をじっと見ているうちに、てれたり、はしゃいだり、嬉しくなったりしてくるに決まっていると思うのですが、さて、どうでしょうか。
皆さんも、どうぞこの絵本をそっと開いておやつと遊んでみてください。
(おりた・みちよ)●既刊に『ねこのどどいつあいうえお』『バッターくん』『でちゃったときは』など。
鈴木出版
『おやおやおやつなにしてる?』
織田道代・作
tupera tupera・絵
本体1,200円