ふたごの姉と妹 〝グッド・ガール〟はどっちかな?
『ノッティングヒルの恋人』や『ミスター・ビーン』などを手がけた映画監督・脚本家のリチャード・カーティスが初めて書き下ろした絵本です。ストーリー展開、さすがに巧みです!
絵は新鋭の手になります。
楽しいクリスマスが近いというのにふたごの姉妹は心配が募ります。この家では、その年、いい子だったかどうか─で、クリスマス・プレゼントが決められる習わしでしたから。
姉は、いわゆる優等生キャラ。妹は思いっきり逆をゆくいたずらっ子。
物語の真髄は、姉妹が互いに相手のことを気遣っているところです。安心の境地にいる姉が、妹のことが気になって心を痛めています。妹の日ごろの悪さは、実は、大好きな自慢の姉を引き立てていたのだ、という事実。
(こんな関係は、ふたごでなくても、たとえば年子の姉妹などにも見られるかもしれませんね。たぶん親でも気づかない微妙な心もようでしょう。)
そんなことがわかってくると、姉のサムも、妹のチャーリーも、とても愛しく思われてきます。サムが姉で妹がチャーリー? そうなのです、どちらも男の名前ですが、サムにはサマンサ、チャーリーにはシャーロットという女の子らしい名前があるのですが、なぜか、そんな名前で呼ばれたことはないふたごちゃん。この姉妹をめぐるクリスマス・イヴの情景を、映画の世界の巨匠が描きました。
イギリスの老舗出版社Puffinが打ち出したコー・プロ(国際共同印刷)の意欲作。翻訳の持ち時間が5日(40ページ)というのもさることながら、仕事の現場はどこもタイトなスケジュールに追われ、緊張感と気迫に満ち満ちたもののようでした。
ゆっくりじっくり、ときにはドキドキしながら、わたしがサンタさんだったらどうする?チャーリーだったらどうする?と、悩みながらページを繰っていただけることでしょう。思いがけない展開に想像を裏切られるうち、いつしか温かい気持ちになって、幕を迎えます。
(きはら・えつこ)●既訳書にP.D.イーストマン『あなたがぼくのおかあさん?』、L.A.アイボリー『ねことおもちゃのじかん』など。
世界文化社
『からっぽのくつした』
リチャード・カーティス・作
レベッカ・コップ・絵
木原悦子・訳
本体1,400円