つたわれ、つたわれ!
私が作画をする上で、一番大切にしていること。それは「やさしく、やわらかく、つたわるように」です。
よく作画のご依頼をうけるものとして、科学やHOW TOなど少し解説を必要とするものが多いです。難しいかもしれない内容も、なんとな〜く、それとな〜く、大事な事は押さえて描きあげます。それは人の第一印象に近いかもしれません。敬遠しないで、まずは手に取って読んでみて、と。
少年写真新聞社さんでお世話になるのはこの『キラキラげんきなめのひみつ』で3作目。小学生の子ども達の心や身体の健康に寄り添ったシリーズで、とても大切な事を伝えています。特に今回の目の健康を伝える本。昨今の小学生の生活の中では、デジタル画面を必要とする場面が年々増え、それは、若年層の視力低下の原因として大きな問題となっています。その上、楽しいゲームとくれば、「もうちょっと!」と続けたくなる気持ちは大人の私でも理解できます。そんな時、この本を手に取ってくれた子が、10分でも多く外遊びに行ってくれたら、と願いつつ制作しました。ご存知でしたか? 外光は、身体の健康に大切な要素なのです。
「この本のナビゲーターは、黒猫です」最初の打ち合わせで、編集の但川さんにそう伝えられた時、正直「うっ!」と思いました。猫がメインで出てくる本を描いた事がなく、ましてや黒猫なんて! しかし、目の事を伝えるのに、黒い身体にキラキラと光る目を持つ黒猫は、うってつけのキャラクターです。それから必死で資料を集めたり、スケッチをしたりしてがんばって描きあげました。もちろんこれは、初めてここで白状します(笑)。いつも新しいお題が私を成長させてくれるのです。
普段はイラストレーターとして仕事をしておりますが、近年、絵本の文章も勉強し、一昨年、昨年と新刊を出す事ができました。その時の姿勢も常に同じです。どうかこのメッセージが、たくさんの子ども達につたわれ〜、つたわれ〜と念じながら、そして楽しんで日々、制作を続けています。
●既刊に『クモのシルバーくん』『オーリンとバイオリン』『おもいやりの絵本』(WILLこども知育研究所/編・著)など。
少年写真新聞社
『キラキラげんきなめのひみつ』
すみもとななみ・え/いがらしたえ・かんしゅう
定価2,200円(税込)