大合唱必至のことばあそび絵本
あきやまただし 作・絵
しりとり、だじゃれ、回文、なぞなぞ、早口ことば……。いずれも子どもたちに人気のことばあそびですが、あきやまただし作の「へんしん」シリーズは、そのどれともちがう、ふしぎなことばあそびが楽しめる絵本シリーズです。二〇〇二年に第一作となる『へんしんトンネル』が刊行されて以来、毎年のように続編が出て、昨年、ついに二〇冊に達しました。
たとえば、『へんしんトンネル』の最初の見開きでは、かっぱが登場します。そのかっぱが「かっぱ かっぱ かっぱ……」とくりかえしいいながら、トンネルに入ると、
「かっぱ かっぱ かっぱ かっぱかっ ぱかっ ぱかっ ぱかっ……」
と、元気なウマになって、トンネルからあらわれます。ページをめくった瞬間、ことばが変化すると同時に、登場人物が思いがけない大変身をするというわけです。ことばのリズミカルなくりかえしによって生まれた緊張感と、思わず笑っちゃうようなキャラクターの変身が子どもたちの心をわしづかみにして、読みきかせの会や園などの現場で、早くから注目されるようになりました。
「へんしん」シリーズの読者層は幅広く、子どもはもちろん、その家族や、園の先生、読みきかせの会の方々など、いろいろな人から、うれしい感想をいただいています。親御さんからは「園で読みきかせしてもらった子どもが大好きになり、それがきっかけで絵本を購入しました」とか、「まだ字も読めないのに、絵本をひとりで開いて何度もことばをくりかえしつぶやいています」とか、園の先生からは「盛りあがるシーンになると、子どもたちが声をそろえて大合唱になります」といった感想が届けられています。
作者は、NHK Eテレで放送中のアニメ「はなかっぱ」の原作者としても有名ですが、創作する際には、作品に接した子どもたちの気持ちをとても大切にしています。次はどうなるんだろうと期待感をもたせては、笑わせたり、おどろかしたり、すかしたりと、アイデアにアイデアを重ねて子どもたちに心から楽しんでもらえる作品づくりをつづけています。作者からわたされた絵本のラフをわたしの子どもに見せて反応を確かめたりしたこともよくありました。そのとき、作者は、担当編集者であるわたしが考えた意見よりも、実際の子どもの反応のほうにいつも耳をかたむけていました。大人の浅知恵よりも、子どもたちの笑願のほうが正しいということなのでしょう。そのあたりが、長年、人気シリーズでありつづけるヒミツなのかもしれません。