絵本の多様な読み方を体感
志村まゆみ 作・絵
2019年10月刊行
みんなが口ずさむことのできる童謡「どんぐりころころ」(作詞・青木存義/作曲・梁田貞)。正式な歌詞は2番までですが、「お池にはまってしまったどんぐりは、そのあとどうなってしまうんだろう?」と考えたことはありますか?
この絵本は、童謡にその後があったら…という想像を広げて作られました。3番は、「幻の3番」といわれる岩河三郎さんの歌詞がベースになっています。創作の原点は、林や原っぱのある町に暮らして、数々の自然遊びを体験した作者・志村まゆみさんの子ども時代です。
まだ出版企画が立ち上がる前、作者が保育園や幼稚園で手作り絵本を使って読み聞かせをしたところ、子どもたちの大合唱になり、先生や親御さんからも出版を希望する声が多くあがった…というお話を聞き、ぜひたくさんの子どもたちが手にとれるかたちで出版したいと考えました。
全編、「どんぐりころころ」の歌にのせて読み進めることができ、実際に活用しやすいようにと後ろ見返しには楽譜も載せています。編曲は、作者の友人でもある木村真紀さんにご協力いただきました。
NPOフュージョン長池の内野秀重さんには動植物の監修をしていただき、葉っぱのかたちや小さい虫のようすなど、自然への思いも細部まで巡らせています。
また、出版までの進行途中でも、ラフ段階の絵本を保育園で読み聞かせする機会をいただきました。さすがは人気の童謡。子どもたちに「このお歌知っていますか?」と聞くと、みんな口々に歌い出し、お話がはじまると真剣に「どんぐり」の行く先を見届けてくれました。
すると先生から、「歌い読みをする前に、一度ゆっくりと読んでも良いですね」とのコメントがあり、「歌にのせて」というイメージばかり持っていた私は目から鱗。別のクラスで実際に、パターンを変えて2回読んでみると、子どもたちはそれぞれの読み方で違った楽しみ方をしてくれているようでした。絵本の読み方は何通りもあるのだと、その可能性を深く再認識した経験でした。
○大きな声で元気に歌い読み
○子守唄のように静かに歌い読み
○メロディにのせずゆったりと読み聞かせ
…など、刊行後も実際に、そのときの気分に合わせて、またお子さんの好みに合わせて楽しんでいただいています。9月下旬~11月初旬と、長いどんぐりの季節に、ぜひ一度絵本を開いてもらえたら嬉しいです。