私もむかしは小学生だった
ぼんやりとしたその企画案の相談を受けたのは、まだ私が若く黒酢ニンニクのお世話になってない頃だった。
そしてその企画が「はい、これです」と届いたとき……。私は白髪のおじいさんになっていた。もしかしたら私の成長を待たれていたのかしら。そういえば小学生の頃、「いなばの白うさぎ」も「ヤマタノオロチ」も読んだことがあった。むろん「天の岩戸」も。
だからどの話も懐かしく、うれしい仕事だった。故郷の夏祭りも大蛇山という。オロチの祭りである。いただいた資料を読むのが、また楽しかった。出雲と大和の権力争いも見えてくる。出雲と越後(ヤマタノオロチ)の争いも。
でも、これは大人の世界のこと。読者は小学一、二年生である。なんといっても面白い読み物として出会ってほしい。日本にはこんな面白い話が残されていると。そして古代史に興味がわく頃、ふと、この本の表紙を思い出してもらえたらうれしい。
ザ・キャビンカンパニーさんが、楽しい伴奏者になってくださった。その絵を想像しながらパソコンに向かっていた。若いお二人の絵と、じいさまのコラボ。思っただけでわくわくしてくる。コラボの楽しさは、同質の出会いよりも、離れていればいるほど楽しい。お若い二人がどんな絵を描いてくださっているのか……。
あるところでこの話をしたら、ザ・キャビンカンパニーさんと内田さんの文と合うのかなあという顔で、「どんな絵ですか?」と聞かれた。私はうれしさいっぱいの顔でいった。「おおらかで、エロチックで、とてもおしゃれな絵です」。いうまでもなくこのエロチックは分解性プラスチックことだ。
だれでもそうだろうが書いていると、自分の文章に自信がなくなってくる。そんなときに編集者大場裕理さんはいつも呪文をおくってくださった。「文章にリズムがあって、とてもいいです」。いつもこればっかり。ではあったけれど、養命酒よりも黒酢スッポンよりも効いたんだなあ。
(うちだ・りんたろう)●既刊に『ぴぽん』『内田麟太郎詩集』『ともだち』など。
文溪堂
『むかし むかしⅠ』
内田麟太郎・文/ザ・キャビンカンパニー・絵
定価1,540円(税込)