絶対的な味方がほしい
もし、もう一人自分がいたらどうするか、子どもの頃に考えたことはありませんか? 代わりに宿題をしてもらったり、家のお手伝いをしてもらったり、運動や校長先生の長い話なんかの苦手なことは全部任せたり? そんな便利屋さんでなく、この作品には「命を共有しているもう一人の自分」が出てきます。もう一人の自分には、自分とは違う人格があり、違う人生があります。
主人公の千代里は、ある理由から「死んでしまいたい」と考えます。テーマがテーマなので、出版していただくことになった時は、重苦しくなり過ぎないか正直不安になったりもしました。けれど、編集者さんの支えや、谷川千佳さんが描いてくださった愛らしい挿絵・表紙により、ファンタジー作品として仕上がったことに喜びを感じています。
千代里は、もう一人の自分である「ヒカリ」と共に運命に立ち向かいます。実は、この作品を書いている時はファンタジーを意識していませんでした。どちらかというと、主人公二人の動向をノンフィクションとして追っている気分で、それはこれまで味わったことのない、とても不思議な感覚でした。
「絶対的な味方がほしい」
友達関係で悩みつづけた小u学生時代。ひとりぼっちの帰り道、太陽を見上げるヒマワリを見ながら、私はいつもこんなことを考えていました。話を聞いてくれる家族も友達もいたけれど、「面倒臭いと思われたらどうしよう」とか「話し過ぎたら離れていくかも」という気持ちですぐにいっぱいになってしまい、大きく心を開くことはなかったのです。そんな私ですから、何も話さなくてもわかってくれる、何があっても味方でいてくれる「もう一人の自分」を夢見ました。
『HIMAWARI』は、そんな願いを形にしました。これまでの作品の中で一番、かつての私のように周りに頼りきれない子ども、そして大人に読んでもらいたい物語です。
(かなり・はるか)●既刊に『流れ星キャンプ』『わたしのチョコレートフレンズ』『夢見る横顔』など。
あかね書房
『HIMAWARI』
嘉成晴香・作/谷川千佳・絵
本体1,400円