日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『HIMAWARI』 嘉成晴香

(月刊「こどもの本」2019年11月号より)
嘉成晴香さん

絶対的な味方がほしい

 もし、もう一人自分がいたらどうするか、子どもの頃に考えたことはありませんか? 代わりに宿題をしてもらったり、家のお手伝いをしてもらったり、運動や校長先生の長い話なんかの苦手なことは全部任せたり? そんな便利屋さんでなく、この作品には「命を共有しているもう一人の自分」が出てきます。もう一人の自分には、自分とは違う人格があり、違う人生があります。

 主人公の千代里は、ある理由から「死んでしまいたい」と考えます。テーマがテーマなので、出版していただくことになった時は、重苦しくなり過ぎないか正直不安になったりもしました。けれど、編集者さんの支えや、谷川千佳さんが描いてくださった愛らしい挿絵・表紙により、ファンタジー作品として仕上がったことに喜びを感じています。

 千代里は、もう一人の自分である「ヒカリ」と共に運命に立ち向かいます。実は、この作品を書いている時はファンタジーを意識していませんでした。どちらかというと、主人公二人の動向をノンフィクションとして追っている気分で、それはこれまで味わったことのない、とても不思議な感覚でした。

「絶対的な味方がほしい」

 友達関係で悩みつづけた小u学生時代。ひとりぼっちの帰り道、太陽を見上げるヒマワリを見ながら、私はいつもこんなことを考えていました。話を聞いてくれる家族も友達もいたけれど、「面倒臭いと思われたらどうしよう」とか「話し過ぎたら離れていくかも」という気持ちですぐにいっぱいになってしまい、大きく心を開くことはなかったのです。そんな私ですから、何も話さなくてもわかってくれる、何があっても味方でいてくれる「もう一人の自分」を夢見ました。

『HIMAWARI』は、そんな願いを形にしました。これまでの作品の中で一番、かつての私のように周りに頼りきれない子ども、そして大人に読んでもらいたい物語です。

(かなり・はるか)●既刊に『流れ星キャンプ』『わたしのチョコレートフレンズ』『夢見る横顔』など。

『HIMAWARI』"
あかね書房
『HIMAWARI』
嘉成晴香・作/谷川千佳・絵
本体1,400円