世の中の仕組みを知ることと社会に関わる気持ち
「学習指導要領に47都道府県名を漢字で書けるように」「学習指導要領に掲載された歴史上の人物名は言えるように」など、社会科というと知識を暗記する教科だと思われているのかもしれません。暗記教科だと思われているので、5年生や6年生の国土や歴史、政治単元ならば何を学習すればよいのかわかるのですが、地理や歴史といった親学問から離れた3・4年生の社会科は「何を学ぶのか?」「教科書を読んでも、何を覚えなくてはならないかわからない」といった声を耳にします。いったい、社会科とはどのような教科なのでしょうか。
戦後に社会科が生まれてから今日まで、社会科の目標は「社会認識を通して、公民(市民)としての資質の基礎を育成する」と要約できます。もう少し簡単に書くと、「世の中、すなわち、社会の仕組みがわかること」そして「進んで社会に関わろうとする気持ちと力を育てる教科」と答えられると思います。
しかし、この社会に進んで関わるということが難しいのです。先日も参議院選挙が行われましたが、若者の投票率の低さは相変わらず改善されていません。高等学校では模擬投票などの取り組みがなされているようですが。成果は芳しくないようです。やはり、選挙に行く意味を見出せなければならないのではないでしょうか。社会の仕組みを学んでいくと、大人でも判断に迷う事例に遭遇します。すると、もっと深く考えてみようとか、よりよく改善したいなと思うことがあります。例えば「消費税は増やしたほうがいいのか」「地方の人口が減ると、東京の人口も減るとは」などです。そんな社会の問題や仕組みを子供たちにわかりやすく示すとともに、一緒に考えてみようということにこだわったのがこの図鑑です。
この図鑑を読んで、子供たちに世の中の仕組みの面白さにふれるとともに、「進んで社会に関わろうとする気持ちと力」を育てていってほしいです。
(かすや・まさよし)●既刊に『アナザーストーリーの社会科授業』『粕谷昌良の「深い学び」をつくる社会科授業4年』など。
誠文堂新光社
『子ども教養図鑑 世の中のしくみ』
小学校社会科授業づくり研究会・著
本体3,200円(10月上旬刊行)