本田パンダをよろしく!
私の友人であり、この物語の主人公でもある本田パンダをご紹介しよう。
本田は、パンダ広告社に入社して五年目のコピーライター。一緒に仕事をしていた先輩、半田パンダが、マジシャンの両親の跡を継ぐため会社を辞めてしまい、ひとりでコピーを書くことに。最初の仕事は、ランドセルのテレビCMに決まった。
同期のデザイナー、神田パンダ子はサクサクと仕事を進めていき、社長の千田パンダも久々のテレビCMに上機嫌。そんななか、本田はなかなかコピーを書くことができない。焦る。
ランドセルの機能を説明するだけじゃコピーにならない。使っているところは映像で伝わる。その先にあるものを伝えたい。
でも、それが難しいのだ。
私は作家になる前に、コピーライターをしていた。テレビCMや新聞広告など多くの人が目にする媒体に、自分の考えたキャッチコピーが躍る喜びを知っている。そして、その難しさも。
私はコピーライターの先輩として、本田にコピーの書き方を教えることもできたが、それをしなかった。なぜなら、本田には仲間がいたからだ。
案の定、本田は仲間の支えと、自らの力で、少しずつ本物のコピーライターになっていく。
そんな彼らをつぶさに観察し、そのまま描いていくのは、じつに楽しい作業だった。本田はよく泣いていた。
高学年向けの擬人化の物語は、珍しいかもしれない。けれど、そうする必要があったのは、人間の大人よりもパンダの大人とした方が、子どもたちの能力や感覚に近い存在になるからだ。
その上で、「言葉の力」と「クリエイティブの醍醐味」を伝えたかった。表現すること、仲間と何かをつくりあげること、そして働くこと、その素晴らしさを伝えたかった。
私の愛すべき友人たちは、おそらく今日も、悩みに悩んで広告をつくっていると思う。
「よろしくパンダ!」、この言葉を胸に刻んで。
(まべ・かよ)●既刊に『しょうぎ はじめました』『まーだだよ』『たぶん ほんと』など。
学研プラス
『よろしくパンダ広告社』
間部香代・作/三木謙次・絵
本体1,400円