日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『カーたろうとこけしっぺ』 山田美津子

(月刊「こどもの本」2019年7月号より)
山田美津子さん

なんてかわいいのでしょう!

 子どものころ、お人形さんごっこが大好きでした。たくさん遊んでいたからなのかどうか、夜、ひいきの人形だけをふとんに入れて寝ようとしたら、他の人形やぬいぐるみたちの視線を感じました。こっちを見て、やきもちをやいているのです。急いで、ありったけの人形とぬいぐるみをふとんに入れると、お互いほっとして、眠りにつけたのでした。

 そのときの感じを、親になってから自分の子どもたちが、ありったけの人形やぬいぐるみをふとんに入れて、寝かしつけているのを見ているうちに、ぼんやりと思い出しました。

 あるとき久しぶりに、子どもではなく、ぬいぐるみを、片づけるためではなく本気で抱っこしてみたら、心がときめきました。なんてかわいいのでしょう! わたしは、とても幸せな気持ちに包まれました。そうそう、わたしは、人形やぬいぐるみが大好きだったのでした。鳥や虫や動物、草や花や木に興味がうつり、そして、育児の中ですっかり忘れていたのでした。

『カーたろうとこけしっぺ』は、好きな人形やぬいぐるみをかわいいなぁと愛でる気持ちや、その人形やぬいぐるみをお世話する喜びのような気持ちを大事に描きました。

 自分の子どもたちが、人形やぬいぐるみのお世話をしていた様子も参考にしました。抱っこはもちろん、おんぶひもを使っておんぶしたり、手ぬぐいで作ったスリングで抱っこしたり、オムツをかえたり、お風呂に入れたり、絵本を読んであげたり、寝かしつけたり、おままごとのごはんをあげたり、キャリーカートに乗せて外へ散歩に連れ出したり……。その熱心な様子は幸せな空気をたくさん出していました。

 この絵本にはセリフがありません。お人形さんごっこをするときのように、自由に楽しんでもらえたらいいなと思います。たとえ自由に楽しめなくても、こけしっぺたちが楽しく遊んでくれるので、大丈夫です。そして、カーたろうがみんな受け止めてくれるので、安心してたくさん遊べることでしょう。

(やまだ・みつこ)●既刊に『かぜ かぜ かぜ』『お母さん、だいじょうぶ?』『かいじゅうのさんぽ』など。

『カーたろうとこけしっぺ』"
理論社
『カーたろうとこけしっぺ』
山田美津子・作
本体1、300円