日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『すまいる』/『ぼくは くいしんぼう仮面』 よしおかアコ

(月刊「こどもの本」2019年5月号より)
よしおかアコさん

笑顔の二冊

 イラストレーターとして何十年も仕事をしてきたある日、「絵本の仕事をしませんか」と書かれた一通のメールをもらった。「ずっと憧れていた絵本の絵が描ける……」内心、飛び上がるほど嬉しかった。

 作者・かくまさみ氏の構成案は、2拍を基調としたシンプルなもの。ページをめくる度、色々な動物の笑顔が登場する、実に愉快な内容だった。その頃、私は自宅で母の介護をしていた。ベッドの母が見せる笑顔が、何よりの救いであり、私の人生に幸せを与えてくれる。「〝笑顔〟をテーマにした絵本」との邂逅に、大義を感じた。

 上梓した『すまいる』は文字通り、軽やかで明るい作品になった。読み聞かせにもたくさん使ってもらっていると聞いてとても嬉しく、本屋さんに並んでいると不思議な気分になった。

『すまいる』の発売から半年後、新たな出会いがあった。キッカケはSNSへの書き込みである。「僕も絵本が作りたいんです!」、プロレスラーのくいしんぼう仮面からだった。現役のプロレスラーと絵本の組み合わせ……話を聞く前からワクワクして「やります」と即答した。

 くいしんぼう仮面は、大阪のくいだおれ人形をモチーフにした覆面レスラーだ。プロレスに笑いを取り入れた先駆者として、二十年近いキャリアがある。彼が絵本に込めたいメッセージは、「人それぞれ自分の役割がある。他人と比べない。役割を楽しみ、心を尽くす」。それは、彼が長年くいしんぼう仮面として活動し、積み重ねた想いから来るものだった。実在のキャラクターと架空のキャラクターがひとつの世界を創る─その楽しさに筆が進む。真摯なメッセージを明るく描いた。

 出会いから半年後、『ぼくは くいしんぼう仮面』は完成した。くいしんぼう仮面は、今日もどこかの試合会場や幼稚園で読み聞かせをする。

『すまいる』、『ぼくは くいしんぼう仮面』に共通するのは〝笑顔〟だ。どちらも私にとって、まちがいなく「笑顔の二冊」になってくれている。

(よしおか・あこ)●既刊は上の2冊。『すまいる』(かくまさみ/作)、『ぼくは くいしんぼう仮面』(くいしんぼう仮面/原作)。

『すまいる』"『ぼくは

出版ワークス
『すまいる』/『ぼくは くいしんぼう仮面』
さとうめぐみ・作・絵
本体1,500円/本体1,600円