日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おばけれっしゃ』 しのだこうへい

(月刊「こどもの本」2019年4月号より)
しのだこうへいさん

おばけれっしゃに乗って

 息子のために作った小さな物語が、たくさんの幸運に恵まれて『どうぶつれっしゃ』として刊行されたのが三年前。これは、ライオンとかばが駅で列車を待っているけれど全然乗れない…そんなお話です。お話の最後にとんでもない駅に到着して終わるので、元のアフリカに帰る話を考えていて…「難しいなあ、おばけならいくらでも描けるのに…狼男で満員とか…あっ!」という訳であっという間に『おばけれっしゃ』のお話はうまれたのでした!

 人間を驚かそうと、人間界行きの列車を待つ骨のおばけと布のおばけ。駅には次々とおばけでいっぱいの列車が到着しますが、骨をかじられたり布が燃えたり、ちっとも乗れません。一生懸命に列車に乗ろうとするおばけたちの奮闘に(全然怖くない!)、おばけ嫌いの子供たちも笑ってもらえると思います。

 そうしているうちに地獄の霧が流れてきて、物語は不穏な雰囲気に。作者もこの辺で「そうだ、これはおばけの本だった」と気がついた次第。ちょっとドッキリするシーンを挟んで、ようやく乗った列車で着いたのは、ハロウィンのお祭りでおばけ姿の人間の町でした…! 最後はまた主人公のおばけたちといっしょになって、のんびりホッとしてもらえる絵本になっています。

 そして、そう、これはハロウィンのお話でもあるんです。日本のハロウィンは、海外から輸入されて、いろんなお店屋さんの思惑もあったはずなのに、いつの間にか日本独自の「変な格好をする日」になってしまってる…そういうの、いいと思うんです。だから絵本の中でも、日本のおばけたちも登場して、提灯みたいなのがぶらさがって、なんだか不思議な感じにしました。この絵本につられて、さらに自由なイベントになってくれたら面白いなあ。

 また、感謝もこめて前作『どうぶつれっしゃ』そっくりのページも登場します。二冊並べてワイワイ楽しんでもらえたら最高です!

(しのだ・こうへい)●既刊に『どうぶつれっしゃ』。

『おばけれっしゃ』"
ひさかたチャイルド
『おばけれっしゃ』
しのだこうへい・作・絵
本体1,300円