日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おばけのアッチ スパゲッティ・ノックダウン!』 角野栄子

(月刊「こどもの本」2019年3月号より)
角野栄子さん

「あっちにいってね……」

「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ」は、今年で四十歳になりました。ところが、今でもかわいい小さなおばけのまんまです。作者の私はちゃんと歳をとってしまったというのにね。でも、愉快なおばけとお付き合いしたおかげで、四十年間、退屈したことがありません。四十歳を記念して、新刊は一巻目と同じスパゲッティのお話です。『おばけのアッチ スパゲッティ・ノックダウン!』一体どんな事件が起きるのでしょう。あなたも「ノックダウン」されないように、ちょっと準備体操してから読みましょう。

 このシリーズは、私の娘が三歳ぐらいの時にしてくれたお話から生まれました。「あっちにいってね、こっちにいってね、そっちにいってね、ふみきりをわたったところにカエルさんのおうちがありました……」娘はこの話がとっても気に入ったらしく、あきれるほど何回も話してくれたのです。その声が私の耳の奥に残っていたのでしょう。まず、小さなおばけの名前は「アッチ」にしようと思いました。名なしの権兵衛さんではお話が始まりませんからね。すると、「コッチ」も「ソッチ」も書きたくなったのです。それで、小さなおばけが三人生まれました。

 一番目のお話は「スパゲッティがたべたいよう」です。その頃、イタリア式のスパゲッティは私の超得意料理でした。みんな、「とってもおいしい。また食べたい!」と言ってくれたのです。それなら、「アッチ」もきっと、「食べたい、食べたい!」と言うに違いない。食いしん坊のアッチのおかげで、「ハンバーグつくろうよ」「カレーライスはこわいぞ」と、つぎつぎお話は生まれてきました。

 小さな読者もおいしいものが大好き。たくさんたくさん読んでくれました。すると、「コッチ」も「ソッチ」も、「書いて、書いて!」と言い出して……、これまでに四十のお話が生まれたのです。

 このシリーズは、おじいさん、おばあさん、お父さん、お母さん、その子ども達へと、三世代に渡って読み継がれてきました。幸せなおばけたちです。ほんとうにありがとう。そして、今度は、五十年をめざして頑張りましょう!

(かどの・えいこ)●既刊に『おばけのコッチ わくわくとこやさん』『おばけのソッチ ぞびぞびオーディション』など。

『おばけのアッチ スパゲッティ・ノックダウン!』"
ポプラ社
『おばけのアッチ スパゲッティ・ノックダウン!』
角野栄子・さく
佐々木洋子・え
本体900円