たいせつなお友だち
保育園の二歳児たちがお散歩で電車を眺めていました。男の子がころんで泣きだします。先生たちが「がんばれー」と声をかけても、同じ組の女の子が、かがんで頭をなでてあげても、泣きつづける男の子。すると女の子は、じぶんも地面にころんところげて、男の子を励ましています。
線路を隔てて駅のホームから見ていた、忘れられない光景です。
子どもがひとりで遊べるようになった最初のころ、よく大人にむかって、「みててね」といいます。大人に手をだしてほしくはないけれど、見守っていてもらいたい。少し年上の子のあとにくっついて、いろんなことをまねしてみたい。そして、じぶんより小さい子がいれば、かばってあげたい。そういう気持ちは、かなり早くから子どものなかで混在しているのかなと思わせるできごとでした。
見守ってほしい、励ましてほしい、守ってあげたい。その場その場で移りかわる気持ちを掬いとるのは、大人にも子どもにもむずかしいこと。子ども自身がどうしたいのか、気持ちをうまく言葉にできないときにも、自在に役割を変えながら傍にいてくれるお人形は、だからこそ、子どものたいせつな友だちになれるのでしょう。
そんな子どもと人形の関係を細やかに描くルーマー・ゴッデンの「四つの人形のお話」を復刊することになりました。一冊ごとにそれぞれちがうお人形と子どものお話が展開する、四巻シリーズです。長く絶版になっていましたが、図書館司書の方々から復刊をのぞむ声が多く聞かれたと伺って、ほんとうにありがたく思い、またゴッデンの物語が息長く愛されていることを改めて感じました。
『(1)ポケットのなかのジェーン』『(2)ゆうえんちのわたあめちゃん』『(3)クリスマスの女の子』に続き、二〇一九年一月には『(4)ふしぎなようせい人形』を刊行します。
たかおゆうこさんが新しく描きおろしてくださった表紙とともに、お楽しみいただければと思います。((3)(4)は挿画も描きおろしです)
(くじ・みき)●既訳書にピアス『アリーの物語II-IV』、ナポリ『野獣の薔薇園』、サトクリフ『ヴァイキングの誓い』(共訳)など。
徳間書店
『四つの人形のお話1~4』
ルーマー・ゴッデン・作
久慈美貴・訳 たかおゆうこ・装画
本体各1、400円