「困った子」じゃなく「困っている子」
毎日同じメンバーと顔を合わせ、同じように勉強し、同じように行動し、同じように遊ばなくてはいけない小学生は、不自由な存在だなぁと思うことがあります。学校には、「みんなと同じ」じゃないといけないような空気があると思うのです。
でも、みんなと同じではいられない子もいます。「コミュニケーションが苦手な子」「落ち着きがない子」「発達がゆっくりな子」「忘れ物が多い子」「同じ失敗を繰り返す子」「何かのきっかけでパニックになる子」……。これらを個性だという人もいますが、日々の中で本人が困っているのだとしたら、個性ではすまされないのではないでしょうか。
そんな子たちの中には、みんなと同じことができないばかりに「ダメな子」というレッテルを貼られてしまったり、何度も同じ失敗をして繰り返し叱られるうちに、自分を「ダメな人間」だと思い込んでしまったりする子もいます。それは、不登校、いじめ、自殺といった形で表面化するかもしれません。そうなったときでは遅いのです。
『となりの火星人』は、そんな生きづらさを抱えている子たちの物語です。どの子も人と少し違う自分に戸惑い、悩んでいます。本当はいいところもあるのに、人と違うところにばかり目がいってしまう。小さいころから積み重ねられた劣等感は、簡単に拭い去ることはできません。自己否定しながら生きるのは、つらく苦しく、幸せな未来など描けないでしょう。
そんなとき、「人と違ってもいいんだよ」という当たり前のことを教えてくれる人がそばにいてくれたら……。「困った子」と突き放すか、「困っている子」と手を差し伸べるかで、その子の人生は大きく変わっていくはずです。
子どもはすべて、同じ教室で安心して学ぶ権利を持っています。一人一人の生きる力を伸ばし、本書に出てくる子どもたちのように、自分を好きになってほしい。それは「みんなと同じ」であることよりも、ずっと大切なことだと思うのです。
(くどう・じゅんこ)●既刊に『セカイの空がみえるまち』、「プティ・パティシエール」「ダンシング☆ハイ」シリーズなど。
講談社
『となりの火星人』
工藤純子・著
本体1、400円