『ワンダー』 ほるぷ出版
R・J・パラシオ作 中井はるの訳
2015年7月刊行
社員みんなで気持ちを一つにして届けた本 『ワンダー』
『ワンダー』は2015年7月に刊行し、刊行から2年以上たった現在も着実に読者を増やし、国内累計20万部をこえました。
物語は、生まれつき顔に障害を持つ10歳の少年オーガストが主人公。両親の勧めで初めて学校に通い、偏見やいじめにあいながらも成長してゆくオーガストの姿を描いた物語です。原作は2012年にアメリカで出版され、世界累計600万部を突破するベストセラーですが、当初社内では、偏見やいじめという重いテーマのため、あまり手に取ってもらえないのではという懸念がありました。
そんななか、2014年の年末、営業部に翻訳された物語の前半部分が渡されました。年が明けて、ゲラを読んだ全員が作品に感動し、物語の感想を話すようになっていました。「これは絶対に多くの人に届けないといけない特別な物語だ」とみんなが感じていたのです。
それから『ワンダー』販促のためだけの会議を何度も開き、アイデアを出し合いました。会社の名刺に『ワンダー』の書影を印刷する、ダイジェスト版を100部限定で制作し、書店さんや学校司書さんに1冊1冊丁寧に手渡しする、ポスター、リーフレットをつくって書店さんに置いていただく、『ワンダー』専用のフェイスブックを開設する……、ひとつひとつは目新しい取組みではなかったかもしれませんが、発売前に思いつくかぎりのことを社員みんなでやっていきました。そうするうちに書店さんから「この作品の良さをお客様に届けたい」という感想が寄せられ、書店員の間でダイジェスト版が貸し借りされるなどし、口コミでじわじわと広がってゆきました。
刊行初日には、書店店頭に『ワンダー』特設コーナーができ、書店員の手書きの感想や、おすすめコメントが用意され、多くの人が足をとめました。次第に、児童書コーナーだけでなく、話題書コーナーや、レジ前のワゴン販売コーナーにも置かれはじめ、販売数を伸ばしていき、当初の「年内までに3万部いけば」という目標を大きく上回ることになったのでした。
そして2017年、続編『もうひとつのワンダー』が刊行されました。『ワンダー』に登場した人物、いじめっこのジュリアン、幼なじみのクリストファー、クラスメイトのシャーロットがそれぞれ主人公の3つの物語です。全ての人に語るべき物語があるのだということをしめしてくれるこの小説が、またたくさんの読者の心をゆり動かしていくのだろうなと思います。