日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ジャングル』  きたなおこ

(月刊「こどもの本」2017年7月号より)
きた なおこさん

いきもの ちきゅう いのち

「フォティキュラー・ブック」シリーズ第一弾、『サファリ』の原書をはじめて手にし、表紙を開いたその瞬間、私は思わずのけぞりました。「めっちゃ動くやん!」

 そして第四弾、『ジャングル』のページをめくった息子が、ぐぐぐっと前のめりに。「うわ、めっちゃ動くやん!」

「フォティキュラー」とは、動画の各コマを細く切って順に並べ、特殊なレンズシートを重ねる技術。ページをめくればシートが動き、もとの動画が再現されます。まるで魔法! 

 そして「ジャングル」ということばにも魔力が宿っているような気がしませんか? 作者も冒頭で語っています。「小さい頃、『ジャングル・ブック』を開いてはひとり胸を躍らせた」。そして彼はこう続けます。「わたしたちの命はすべての命とつながっている」

 この本は、生物の「動画」と「紹介」、そしてエッセイで構成されています。シリーズに共通するテーマは、「いきもの ちきゅう いのち」です。

 暗くなれば電気を灯し、遠出のときは楽しくドライブ。まっ白なノートにとがった鉛筆、プリンターにはコピー用紙……。私たちのそんな日常の向こう側で、野生動物がすみかを失っているという現実。そして、それでも彼らは生きているという事実。

 ページをめくってみてください。表紙のカエル、トラやチョウなど、八種類の生物がいきいきと動き出します。私たちと同じように、この星に生を受けたなかまたち。おうちで、図書館で、本屋さんで、この本を開いてくれた子どもたちが、こうつぶやいてくれたらいいな。「こんなふうに動くんだ!」

 そして、ジャングルの世界を疑似体験し、「ちきゅうのなかま」の「いのち」に触れたその先で、いつかもう一度ページをめくり、感じてくれればと願っています。この本にこめられたメッセージを。森林にこだまする生命の歌を。

 最後にこの場をお借りして、何度もお力を貸してくださった和歌山県立自然博物館のスタッフの皆さまに感謝申し上げます。

●既訳書に「フォティキュラー・ブック」シリーズ『サファリ』『オーシャン』『ポーラー』など。

『ジャングル~動く写真で見るジャングルの世界~』

大日本絵画
『ジャングル~動く写真で見るジャングルの世界~』
キャシー・ウォラード・ぶん ダン・ケイネン・さく きたなおこ・やく
本体3、200円