うさ晴らしからの大逆転
三年ほど前のことです。
私は、「童話賞に応募しては次々落選」という日々を過ごしていました。
選外の通知が相次ぐと「どうせ私なんて」と、なげやりな気持ちになります。
そんなとき、ふと「このやさぐれた想いをそのまま作品にしてみよう」と思い立ちました。
手元にあった一つのアイデア「ハリネズミがヒツジの背に落ちる」の主人公たちを「ささくれだった心の持ち主にしてしまえ!」。
ほとんど「八つ当たり」のような所業ですが、それが思いのほか面白かったのです。
お話が、ではなく、書くことが。
それまでの私は、受賞に憧れるあまり「おりこうさんが登場するお行儀のよい作品」を書かなければ、と勝手な思い違いをしていたようです。
半ばヤケになって彼らを怒らせるとどんどんストーリーは進みます。
意地の悪いヒツジの背中に転がり落ちたハリネズミは、羊毛にハリがからまって動けなくなります。
性格が悪いので、話せばケンカになり、他の動物に「助けてください」とお願いすることもできません。
やがて、羊毛は縮んで硬くなり、ハリネズミは弱っていくのです。
私はこのとき、「のびのび書く」という感覚を久しぶりに味わいました。
その後、この作品は、日本児童文芸家協会創作コンクールつばさ賞・童話部門優秀賞をいただき、無事出版の運びとなりました。
楽しんで書くことの大切さを再認識させてくれた本作でデビューできて、本当にうれしく思います。
しかし、「楽しかった」とはいえ、「こんな無愛想な主人公たちで大丈夫かしら?」と不安になりましたが、絵本作家の洞野志保さんがとても可愛らしい挿し絵を描いてくださいました。
ヒツジとハリネズミは、新しい森で新しい生活をはじめます。
私もこの経験を忘れず、新しい作品に取り組んでいきたいと思います。
(はぎわら・ゆか)●本書が初の著作。
PHP研究所
『せなかのともだち』
萩原弓佳・作
洞野志保・絵
本体1、100円